私が私の師の下で歌を学んでいた時、
「1つの曲を7通りの歌い方で歌えるようになったら、プロとしての通用するぐらいの技術が身に付いたと言える」
と言われていました。
本日はこの「プロとして通用するための技術」を、どう身につけて行くかについてのお話をしようと思います。
私の師、M.ハーマー氏が言われた「7通りの歌い方」というのは、「7つのジャンルの雰囲気で」ということです。
7つのジャンル…ポップス、ロック、ジャズ、ブルース、BOSSA、レゲエ、R&B。
この異なったそれぞれのジャンルで歌おうとする時、歌い手には、そのジャンル特有のリズム(=アクセント)が身につきます。
ポップス・ロックであれば、8もしくは16ビート。
ジャズであればスイング、ブルースならば8分の12拍子のリズム。
BOSSAのルンバや、レゲエのアフターリズムなど、ジャンル毎のリズムには大きな違いがあります。
このリズムやアクセントが身体の中に入ると、それは自分の音楽の引き出しとなります。
そしてそれは、歌う時の構成力としては勿論、楽曲作りにもとても大きな効果を出すのです。
あのビートルズが、革新的な名曲を次々と生み出せた理由は、ここにあると私は思っています。
ビートルズの曲は、曲ごとにそれぞれが大変異なるリズムと雰囲気を持っています。
ある曲にはロックの雰囲気があり、
かと思えばブルースのリズムを持ったものや、ジャズのテイストが入ったものもある。
彼らが生み出す曲は「これ」という1つの型に留まることなく、様々な雰囲気と曲調を持っていました。
これは彼らの中に、各ジャンルのリズムと雰囲気が、音楽の引き出しとして備わっていたからに他なりません。
それでは、その7つのジャンルで歌えるようになるために、実際どうすればいいのか。
まずは、聴くことです。
各ジャンルの代表的なアーティストの楽曲を、聴きこむこと。
何を聴けば良いのかわからないのであれば、ご自身の歌の先生にアドバイスを求めても良いでしょうし、
今は、Youtubeなどの動画サイトで「ブルース」などのキーワードを打ち込めば、
そのジャンルの曲を検索をすることも出来ます。
そのジャンルの歌を聴いてみたら、次にその中で「自分が歌ってみたい曲」を探して下さい。
一曲で構いません。
その歌を、そのジャンルっぽく、そのアーティストの真似をして歌いこんでみる。
「モノマネが歌の上達に有効」というのは、皆さんも一度は聞いたことがあるでしょう。
そのアーティストの歌い方をマネしようとして歌うことで、
そのアーティストの持つ歌い方の「良さ」を吸収することが出来るからです。
息の吸い方、声の出し方、休符の取り方や抑揚などのアーティキュレーション。
そういった「良い部分」を、感覚として知らず知らずの内に身に付けることが出来るのです。
7つのジャンルを身につけるということは、7つの個性を自分の中に養うということでもあります。
そして、「1つの曲を7通りに歌える」ということは、
1つの楽曲を、7通りの解釈と表現方法で歌えるということなのです。
プロとしてステージで歌う時には、そのイベントの趣旨、会場の雰囲気、客層、他の出演者やセットリストとの兼ね合いによって、歌い方を変えねばならない場面が多々あります。
たとえ自分のオリジナル曲であったとしても、様々な歌い方、様々な雰囲気で歌えるようになっておくことは、プロとして必須条件なのです。
プロとして活躍したい、プロとしての技術を求めたいと思う方は、自分の好きなジャンルだけにこだわることなく、
様々なジャンルの曲を聴き、様々な歌い方で歌えるようになって行って欲しいと思います。