~声区の切り替えと換声点の歌い方~
ボイストレーニングのレッスンを受けている方だけでなく、
友達や同僚とカラオケに行ったことのある方ならば、
きっと一度は経験したことがあるでしょう。
今日はそんな「声の裏返り」についてお話をして行きたいと思います。
低音で始まったメロディが高くなって行く間で、声が突然ひっくり返ったことはありませんか?
「突然変な声が出て恥ずかしい…」と、
そんな経験をされた方も、きっといらっしゃると思います。
そもそも、これは何故起こるのでしょう?
皆さんの中で、声区という言葉をご存じの方はいらっしゃるでしょうか。
これは言葉の通り「声」の「区域」のことです。
声区には3種類あり、低い方から順に、
胸声区、中声区、頭声区と呼ばれています。
それぞれの声区で出される声は、
低 胸声…胸に響く(置く)ような声
↕ 中声…おでこ、又は耳の横に響く(置く)ような声
高 頭声…後頭部に響く(置く)ような声
と区別することが出来ます。
胸声は地声、頭声は裏声、
そして中声は「そのどちらでもない声」だと言えば、わかりやすいでしょうか。
声区によって声帯の使い方も、息のバランスも異なります。
声帯をどの程度引っ張り、
引っ張った声帯の、どの部分がどれぐらい合わさって、
どれだけの量の息が通って、声になるのか。
これは、声区ごとに全く違うのです。
そのため、それぞれの声区に応じた声の出し方が必要となるのですが、
「声がひっくり返る!」と悩んでいる方は、この切り替えがきちんと出来ておらず、
低音部を歌う時のままの発声で、高音部も無理やり歌おうとしている方がほとんどです。
歌い出しの低音の部分は弱く出して、高い音程を
「低音部を歌っている時の声の出し方のまま」、
息の力で無理やり上げていませんか?
声区ごとの発声がきちんと出来、声を切り替える感覚を身につけて、
声区の境目である換声点(ブリッジ)がスムーズに出せるようになると、
声がひっくり返ることはなくなります。
では、声きちんと切り替えながら、ひっくり返らないように歌うには、
どうしたら良いのでしょうか?
克服するためのコツは、まず4つあります。
①歌い出しの言葉で流れを作る
声がひっくり返ってしまう方のほとんどは、歌い出しが必要以上に弱くなっています。
最初の一音の出し方が、フレーズ全体を決めると言っても過言ではありません。
この最初の一音を意識して、フレーズ全体の流れを作りましょう
②しっかりと声を出す
声がひっくり返ることを怖がり過ぎると、息も語気も弱くなってしまいます。
腹式呼吸を使って、しっかりと声を出しましょう。
③滑舌良く音を上げて行く
言葉のそれぞれの母音の形に口を開き、子音の語気にも意識を持って、
滑舌良く音を上げて行きます。
この時、声そのものを口で取りに行くことのないよう、
②番の腹式呼吸もしっかりと使って下さい。
④息の流れをキープする
低音部を出した時の息の流れを途切れさせず、それをそのままキープして高い音に持って行きます。
息の流れをキープすることは、歌う上でとても大切なことです。
私のスクールでは、リップロールなどのエクササイズを通じて、これを教えています。
もしこれでも「変わらない」「よくわからない」という方がいらっしゃったら、
イメージを少し大げさに持ってみてください。
喉を開くことや、腹式呼吸をもっと意識してみたり、
丹田(おへそから指二本下に下がった部分)に力を入れてみるなど、
ご自身で思うよりも、少し大げさにやってみると効果があります。
皆さんがよく悩まれる中声区の声を出すためのエクササイズとして、私が生徒に教えるものに、
目線の移動があります。
声を出しながら、目線をおでこからその上部、又は耳の前から横に持っていきます。
(※実際は、耳の横には目線は行きませんのでイメージです)
私は「顔が開く」という言い方をしていますが、
こうやって声を出すと、響く場所や声の位置が移動したことが感じられやすく、
今までにない声が出るようになるのです。
上でお伝えした「4つのコツ」が出来るようになったら、下記にも注意をしてみましょう。
■ボリューム
高い音になったとき、それまでの音と比べて、極端に小さくも、極端に大きくもならないように気を付けてください。
自分で「物足りない!」と感じても、息の力で押しすぎるのはやめましょう。
■バラードを歌う時(レガートでつなぐ時)
「この辺でそろそろひっくり返るかな」と思う、少し手前から早めに裏声を混ぜてみてください。
声がひっくり返らないイメージを持って、
ひっくり返りそうになる少し手前から準備をすることがポイントです。
カラオケを得意とする方の中でも、この声区の切り替えで悩まれる方が大変多いようです。
「低いところはきれいに出るんだけど」…
「みんなが出ない高音は出るんだけど」…
「でも中声が出ない。その切り替えが出来ない。」
そういう悩みを、よく聞きます。
POPSでは特に、中声区が出てこない曲はありません。
中声区で使う「真ん中の声」と、
その声区への、又はその声区からの切り替えが出来ないと、一曲を歌いきることは出来ないのです。
文章だけでご説明するのは、なかなか難しいものではありますが、
ぜひご自身の歌の先生とこれらを試してみてください。
きっと、今まで出したことのなかった貴方の声に出会えるはずです。